「わからない」と思うための対話 第13回 感想

 

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今回のテーマはこれ!

 

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「Aの望みとBの望みの間でどちらを取るか迷ってしまう」、これが葛藤です。

「食べたい」というのと「痩せて水着が似合うようになりたい」というのは「あちらを取ればこちらが立たず」みたいな関係になってますよね。

 

 

 

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葛藤の渦中にいる人というのはそもそも、自分がどういう望みの間で迷って葛藤に陥っているのかっていう自覚が案外なく、ただぼんやりモヤモヤしてるケースっていうのが多いんです。

で、まず丁寧に話を聞いてあげて、「こういう望みがあるけどその望みを叶えようとするとこういう問題が起きるのね。つまり別の望みがあってその望みが叶わないということが起きちゃうのね」という風に……皆さんであれば話を丁寧に聞いていくと「2つの望みの綱引きになっているのね」というのが見えてきます。

で、「あぁ、これが葛藤なのね」と、そこの2つの望みの間で天秤にかけて綱引き状態になっているということが分かるだけでだいぶ整理されてスッキリしてきます。本当に深い悩みというのはいつでもモヤモヤと“もや”にかかったような姿が見えないものになっています。

 

全然ピンとこない……。「そうか!自分はこの2つの望みの間で綱引き状態になってるのか!スッキリ!」となった経験がこれまでの人生で1度もない。

たぶん、ぼくは自分の悩みはどういう形になっているのかを常に整理して考えているからだろう。

でもぼく以外の人でも、悩みが整理されただけでスッキリするイメージが湧かない。本当にそんな人いるのだろうかというのが率直な疑問だ。

 

 

 

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葛藤というのは普通に生きているとまあ確実にたくさん出てきます。

その葛藤があること自体は全然不思議じゃなくて、生きていれば葛藤の山の中で僕らは生きていくわけです。じゃあなんで葛藤が問題になるのかって言うと、その葛藤を抱え込めなくなった時に問題になります。

例えば小さい子供っていうのは目の前に何か望みがあってもそれが思い通りにならないような時にすぐ泣いたり叫んだり怒ったり色々しちゃうでしょ。あれっていうのは葛藤を抱え込んでおく能力っていうのが低いからなんですよ。で、だんだんと成長して大人度が上がっていくにつれ葛藤を抱え込む量が増えていきます。なかなか思い通りのウハウハではなく、あちらを立てればこちらが立たずでなかなか難しいなと思いながらも、まあぼちぼちやっていきますかという感じでやっていくということができるようになるんですね。これが心の成熟度というものです。

 

日本の精神科医のすごい有名な人で神田橋條治さんという先生がいるんですけど、彼は著作の中で、「葛藤能力の育成というのは心理療法の一つの目的である。精神療法が目指すことというのは葛藤を抱え込める人間を作ることなんだ」という話をしながら、面白い掛け声として「思考は複雑に。行動はシンプルに」というのを挙げているんだよね。

これはどういうことかというと、葛藤っていうのは A の場合は B になるし B の場合は A になるし、こうだしこうだしってこう色々と条件分岐をしながらウーンって深く考え込むわけです。だから葛藤を抱え込むと思考が複雑になるんです。

 

その一方で、実際に行動の A をやったりやらなかったり B をやったりやらなかったりすると結局現場レベルで効果が出ないんです。混乱して色々と問題が起きます。だから頭の中では十分複雑に葛藤を抱えてあれこれ考えて、でも最終的な行動はシンプルに何か一つの方向性で動く……これができるとスムーズにいくということです。

 

で、逆のパターンの頭の中で葛藤を抱え込めない人っていうのはもう、「白か黒か」「全部か無か」みたいな形で葛藤を抱え込めないから思考がシンプルになります。で、思考がシンプルになる代わりに実際に動こうとするといざその場で別の考えが生まれてきたりとか問題が起きたりとかして、あっち行ったりこっち行ったり矛盾するような行動を2つ3つ同時にとっていたりする。そうすると今度は思考はシンプルで行動は複雑になります。

 

だから葛藤をたくさん抱え込んである程度客観的に眺めてコントロールできる人の方が、行動レベルではシンプルに結果が出る行動が取りやすいということですね。

 

ぼくは会社を辞める時にまさに「思考は複雑に、行動はシンプルに」ということをやった。

会社を辞めようか迷っている時、ぼくは周りの信頼できる大人10人ぐらいに相談した。1つ1つの意見を聞く度にきちんと葛藤した結果ぼくの考えは変わらずやはり辞めようと決断したのだが、その時「これは相当強い意志が必要だぞ」と思ったのをよく覚えている。

 

バックレずに大企業を辞めるには、母親と姉と課長と部長の承認を得なければならない。当然猛反対されるだろう。それが終わったら今度は会社の同期や先輩に謝り倒さなければならないのだ。当然すごく残念な顔をされたりヤバいやつだと思われたりするだろう。しかも即日辞めることはできないから、そんな空気の中で数日は過ごさなければならないのだ。

 

ぼくは罪悪感を感じやすい人間なので、これだけの壁を突破するには本当に強い決意をする必要があった。スラムダンク安西先生が言っていた「断固たる決意」というやつだ。

 

ぼくは決めた。

「誰に怒られても泣かれても、絶対にこの意志は変えないぞ」

 

そして実際、母に泣かれても部長に怒られても、「辞めます」の一点張りで通し続け最速で会社を辞めたのである。

 

あれは本当に辛かったが、行動を途中で変えないでよかったと思っている。ぼくのメンタルでは会社を続けることはどうやっても不可能だったからだ。母に泣かれて「じゃあ続けるよ」と言ったところで、どうせ精神状態を悪くし体調を崩し、より多くの人に迷惑をかけ結局退職していたに違いない。

 

そういうわけでぼくは難しい葛藤の問題を処理できる人間なのだが、どうやらこれサイコパスの人の特徴であるらしい。

 

岡田斗司夫は毎日メルマガ(今は配信終了している)で、「サイコパスの特徴は社会性の欠如にあり、例えば『それは離婚すればいいじゃないか』などとズバッと決めることができる。だが普通の人は『そうは言ってもお互い事情がね……』という風に考えてなかなか決断ができない」というようなことを書いていた。

 

 

ぼくに依頼してくれる人も、そういう風に決断ができない人が多い。ぼくがルートを教えて「なるほど、いい方法ですね」とは言うものの、「でも勇気がないんですよね」とか「それをやったら人を傷つけてしまうから」とか言ってなかなか決断しないのだ。

 

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ぼくには正直、そうやっていつまでも決断しない人のことがよく分からない。勇気が必要だったり罪悪感を感じたりする気持ちはとてもよく分かるが、どこかで選ばないと仕方がないではないか。葛藤し尽くしたら一つシンプルな道を決めて行動しようぜと思ってしまう。

 

 

 

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葛藤処理のパターンなんですけど、これは正直なかなか色々あります。で、そもそも処理をしなきゃいけないわけじゃないんですよ。

 

一応一番理想的な方から行くと、1番の「2つの望みを両方とも実現する」、これはつまり葛藤じゃないですね。この形で解決すればまぁウハウハなんで問題はないです。

で、もしもこの形で解決しようと思った時には2つの望みを両方とも実現するという望みを掲げて、そのルートが分からない「ルート不明」という形になります。で、ソースを探したりとかいう形になるんだけど、そうやってもルートが出てこないから葛藤になるわけです、きっと。



2番は今日のメインなので後で解説します。

 

3番の「覚悟を決めてどちらか一方を選ぶ」は何となく我々が普通にイメージするものですよね。結局 A か B か て迷ったらどっちかを決めるしかないという、まぁシンプルな話です。

 

4番の「両方の望みを少しずつ実現するような妥協案を実行する」、これは折衷案っていうやつね。両方の望みを少しずつ実現するような妥協案、折衷案を実行する。こういうやり方もあるでしょう。

 

最後の5番「ずっと迷い続けて何もしないでおく」、こういうパターンもあります。葛藤で動けない人はこの5番のパターンです。

で、まぁ別に場合によっては5でもいいんだよ。少なくとも話を聞いている側は自分の問題じゃないから5で何の問題もないです、最終的には。

だからあんまり「葛藤処理をせよ!」と迫って焦らせてもいいことはない。相手には相手のペースというものがあるので。まぁやれる援助というものはしますが、基本的にあんまり無理強いして押したりはしないです。

 

なるほど、5つもあるのか。意外と多い。


 

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食べたいという望みとやせたいという望みがあるとするじゃないですか。これのうちのどっちを優先するかっていうのを望みの山登りをする時は決めていきます。

 

 

 

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じゃあ「食べたい」の方にとりあえず×をつけて、「やせたい」の方はそのまま残すことにしましょう。

となると山登りはどう使うかというと、要は「食べたい」の方は無理だけどその一段上の目的だったら実現できるかもしれないよねと。

「食べたい」と「やせたい」の両立は不能だけど、「もしあなたにとって食べる時と食べてない時と比べてどう違うの?」と聞くと、人によって答えは色々だと思うんだけど、例えば「リラックスしたいんです」とか言われたとします。

そしたら「じゃあリラックスできれば食べる以外の方法でもいいんですか?」と聞いて、「そうですね」と言われたら、「やせたい」と「食べる」以外の「リラックスする」という形で少しは葛藤から逃げられるわけですよ。

 

これは素晴らしい解決方法だなと感動した。葛藤は綱引きである以上必ず何か手痛い思いをしなければならないと思っていたが、望みの山登りをしてその手段の目的を叶えることで、何のダメージも負わずに両方の望みを実現できる場合があるなんて! 実に鮮やかな解決方法である。

 

でもよく考えたらぼくも特定の問題に対してはこう考える場合があって、例えばリストカットなどがそうである。「リストカットしたい」という望みを無闇に否定してはいけないが、かと言ってやはりリストカットをし続けるのはやはり不健全だろうしぼくはできればやめさせたいと考えている。

 

なのでいつか「リストカットしたい」「だけど親にはバレたくない」という人が相談に来たら、「リストカットをするのは何のためなの? そうか、自分を痛めつけたいんだね。だったら筋トレをやって痛めつけるのでもいいのかな?」という風に別の手段を提案しようと考えている。

 

(余談だが上記の文章を書いた数日後に「心の安定を図るために叩かれ屋をやりたい」という相談を受けてタイムリーだなと思った)

 

 

 

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逆のパターンもできます。

こんな風にしてただ片方を選ぶだけだとあまりにも悲しいので、選ばない方については手段は無理でも1個上の目的レベルで何か叶えられないかなというのを考えてみるんです。ルートがある時もあるし、ない時もあります。

 



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実際はこの2までできたらもうOKっていうケースが多いです。ここまででだいぶ仕事したんだよ。こっから先はなかなか難しいんだよね。実際解決できない葛藤なんて山ほどある。

3番は好きな方から行ってもいいし、相手に聞いてもいいです。

一応仮にだけど片側に一旦×をつけるっていう動きじゃないですか。だからこれはうまく話を進めないと、「もうこっちを諦めろっていうことですか?」っていう風に反発する人が出てくるわけ。だから「これはあくまでも思考実験であって両方の可能性を考えてみてるんですよ」っていう風に相手に反発されないように持ってこないと逆効果になるので気をつけてください。

 

これは本当に気をつけないといけないだろうな。少しでも反発されてしまったらもう相手に対して影響力を持てなくなってしまう。

 

 

 

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葛藤処理の時にやっぱり重要なのは、とにかく無理に葛藤を解消させようとしなくていいということです。

 

「あなたの中にはこんな葛藤があるんだね」ということを安全にちゃんと2人で共有してそれを眺められるようになるという、そこが最初の一番重要なポイントになります。

 

「困ったね、ちょっと様子を見ようかな」って「様子を見られる」というのも大事な能力だよね。性急な判断をせずに。

で、様子を見ているとどんどん状況が悪化していくという場面も時にはあって、そういう時には最後、決断をするしかないんですよ。

 

最初に書いた通りぼくはまだピンと来てなくて、「葛藤はなるべく解消させた方がいいだろ。『こんな葛藤があるんだね』って言うだけだったら相手は大して満足しないだろ」と思っているが、「最初は」確かに葛藤を整理して一緒に見つめるということが大事だと思う。

 

 

 

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第13回が最後の講義だったので、この記事を以て「わからない」と思うための対話の感想記事は終了である。

 

厳密に言えば第14回の実践編が本当の最終回だが、そちらでは講義は無くタイトル通り実践しかしていないため新たに記事は書かない。興味がある方はこちらの動画をご覧いただきたい。

 

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どんな感じだったか結論だけ簡単に説明すると、ぼくは今まで学んだ技術を使いまくって劇的に成長した姿を見せられたと思っていたが、自分の頭を使って自分の思いついたルートを伝えることばかりしており相手の頭を使わせようとはあまりしていなかった。その為めんたねさんからは以下のような評価を受けた。

 

 

ぼくは元々「相手のことは相手に聞いても分からない場合がほとんどなので、こちらが頭を使って相手にない視点からのアドバイスをズバッとすべき」と考えている人間で、その考えは今でも大体の場合において正しいと思っているのだが、せっかくの機会なのでぼくとは真逆のめんたねさんスタイルを1度身につけておくことが今回オンラインワークショップを受けるにあたっての目標だった。両方のスタイルを身につけられれば幅が広がるし偏らなくて済むからだ。

 

なのでそのスタイルがあまり身につかなかったことは、残念だし勿体無いなぁと感じている。

 

だが同時に、人生は長いので今はそれでもいいかとも思っている。

ぼくは「これは覚えておきたい、考えたい」と思ったことはいつまでも覚えて何度も何度も折にふれ考える人間なので、これから先の人生で、「あ、そういえば『わからない』と思うための対話でこんなことを習ったな」と思い出すことが数え切れないほどあるだろう(その時には当然この記事を参照する。そのために一生懸命書いてきたのだ)。そうして少しずつめんたねさんのスタイルを身につけられるようになればいい。

 

本当に学びの多いワークだった。これだけ素晴らしいものを無料で受けさせてくださり、めんたねさんには非常に感謝している。どうもありがとうございました。